E30386(W5017)

脇指 銘 氏信岩捲

新刀 安土桃山時代(元亀~慶長頃/1573~1614) 美濃
刃長 37.9 cm 反り 1.0 cm 元幅 30.2 mm 元重 6.7 mm

保存刀剣鑑定書

 

剣形:菖蒲造り、庵棟。身幅が広く元先の幅差はさまで開かずにふくら張って先反りがつく。鎬高く棟肉を削いだ強靭な造り込みで威風堂々としている。(刀身拡大写真
鍛肌:板目肌に杢を交えて鎬地柾目。総体に強く肌立ち、平地を覆う細やかな地沸を分けて太い地景が際立つ。
刃紋:小錵本位の互の目乱れ刃の焼刃高く、総体に箱刃をかたちどり、処々尖り刃、丁子を交えて変化がある。互の目乱れの谷には沸厚く凝り太い沸足入って砂流し頻りにかかり、刃中匂い充満して明るく鮮やか。
帽子:互の目乱れ込んで焼き強く先小丸となり、激しく掃き掛けて深く棟に返す所詮『地蔵帽子』を形成する。
中心:生ぶ、目釘孔壱個。鷹の羽の鑢目。刃上がりの栗尻が張る。佩表の目釘穴下棟寄りには大振りの四字銘『氏信岩捲』とある。
 室町時代の中期、大永頃(1521~27)になると長良川・揖斐川に挟まれた田園地帯(現在の岐阜県揖斐郡揖斐川町清水)あたりに『岩捲』の二字を添える鍛冶が出現し新刀期まで鍛刀している。
 代表鍛冶に『氏信』がおり、清水城主・稲葉 良通(晩年は稲葉 一鉄と名乗る)の抱え鍛冶といわれている。『氏信』、『氏信岩捲』、『濃州清水住氏信』などと刻した作品が現存している。
 この脇指は安土桃山期(元亀~慶長)頃の三代目『氏信』の作。功を賞して「法橋」(僧侶に準じて仏師・絵師・医師・刀匠などに与えられた称号)に任じられるという。

銀地鍍金腰祐乗鑢はばき、白鞘入
参考文献
鈴木卓夫・杉浦良幸『室町期美濃刀工の研究』里文出版、平成十八年
杉浦良幸『美濃刀工銘鑑』 里文出版、平成二十年