M2710(S8907) 刀 無銘 長船政光 附)黒蝋色塗雲文蒔絵鞘打刀拵 |
特別保存刀剣・特別保存刀装具 | |
南北朝時代(延文頃/1356~) 備前 刃長 69.8cm 反り 1.4cm 元幅 31.1mm 先幅 23.4mm 元重 5.5mm |
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剣形:鎬造、庵棟、無銘。大磨上げながら身幅広く、元先の幅差はさまに開かずにやや腰反りがつく。重ね控えめに鎬地に比して平地が広い造り込みに中峰が延びた体躯は南北朝時代盛期の典型をしている。表裏には樋先の下がった丸留棒樋の彫物がある。(刀身全体写真) 鍛肌:大板目に杢目を交え肌立ち、地斑調に地沸がついて地景はいり鮮明な乱れ映りがたつ。 刃紋:小互の目・肩落互の目に逆がかった丁子刃や尖刃を交える。乱刃の焼頭より湯走り状の匂いを放射して地斑調の乱れ映りがたつ。 中心:大磨上げ無銘。切鑢で茎尻は切。目釘孔三個。 帽子:大きく乱れこんで互の目を焼いて大丸。 婆娑羅の社会的風潮のもと、南北朝時代になると鎌倉時代末期の勇壮な姿が極度に誇張された。すなわち、太刀は身幅広く寸も極度に伸びて三尺を超えるものもあり、背負太刀や野太刀と云われる大振りなものが出現した時代でもある。 備前長船兼光門には二代の兼光や同門の倫光、義景、基光や表題の政光らの名工を排出している名門として周知されている。彼等は本伝である備前伝を基本としながらもこれに時流の相州伝を取入れて乱世を生き抜く武人らの好みや時流の要請に応えた。 政光には延文二年からの年紀作がみられ同銘の最終年紀は応永六年である。剣形から鑑みると、延文兼光風の作品を初代とし小反り風のものを二代とされている。表題の刀は大磨上げながら幅広く腰反りの感強く切先が大きく延びる作風は師伝を蹈襲している。鍛えは大板目に杢鍛えを交え、刃文は伝統の肩落ち互の目がやや小づむ処が看取され、互の目の頭から匂が尖って地に煙りこんで乱れ映りを呈するなど、兼光一門のとりわけ政光の特徴が顕れており個性的である。 表の横手下に鍛割跡があるものの上研によりよく抑えられている。南北朝期の典型の婆娑羅の体躯を讃え、相伝備前正系兼光門の地刃は闊達な沸匂の働きがあり、鮮明な乱映りは妖艶たる美しさを具現して十二分に堪能できる。 附)黒蝋色塗雲文蒔絵鞘打刀拵(拵全体写真・刀装具拡大写真)(特別保存刀装具・特別文化資料刀装具)
附)貴重刀剣認定書(大磨上無銘伝兼光) |
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