O93813(W8571) 脇差 銘 相模守藤原泰幸 特別保存刀剣
新刀 江戸時代前期(寛文頃/約350年前) 尾張
刃長56.6cm 反り0.8cm 元幅32.2mm 先幅23.5cm 元重9.0mm
剣形:鎬造り、庵棟。反り浅くつき、重ねは厚く平肉豊かについて頗る重量がある。元身幅が広く、元先の幅差がややついて大切先に結ぶ豪壮な姿をしている。(刀身拡大写真
鍛肌:地鉄は小板目肌が密に詰んで強く澄んだ美しい鉄色をしている。平地は地錵が沸いて厚くつき、青黒く強い地景が冴える。鎬地は柾目肌が密に詰む。
刃紋:元はごく短く焼きだして、小錵本位の丁子、蛙子丁子、互の目乱れを交えて跳び焼があり、焼高く鎬筋を越えて棟焼交え、所謂「皆焼」状態となる。刃中は柔らかな匂いを敷いて、丁子の足が入り、砂流しが掛かり、葉が頻繁に浮かび、皆焼中にも砂流しがかかるなど豊かな働きがある。刃縁には明るく冴えた小錵が厚くつもり頗る明るく冴えている。
帽子:直ぐに二重刃ごころ、先中丸となりやや深く返る。
茎:生ぶ、鑢目大筋違。目釘孔壱個。茎尻は剣形となりここに切鑢がある。茎棟は小肉いて大筋違に化粧の鑢がある。佩表に七字銘『相模守藤原泰幸』の銘がある。茎鑢、銘ともに鏨が深く錆色の状態が良い。
 初代の泰幸は本国美濃、慶長十五年二月の名古屋城開府に伴って、名古屋城下南長島町(現在の名古屋市中区)に移り鍛刀に従事、能登守を受領した。能登守泰幸は寛永八、十三、十五、十八、二十の年紀銘がある。
 本作は二代、相模守泰幸の長脇指。名を「新兵衛」といい、初代とともに名古屋城下長島町に住した。寛文五、七、八、十の年紀銘を慧眼する。初代に比して銘鏨・茎鑢ともに深いことが特徴で、茎尻が初代は刃上がり栗尻であるのに対して、二代のそれは剣形である。
 この脇指の威風かつ強靱な体躯は尾張武士委の貫禄を湛える。茎の鑢目、銘字の鏨は鮮明で保存状態は頗るよい。頗る強く冴えた地鉄に皆焼を焼いた相模守藤原泰幸の白眉である。
金着せ二重はばき・白鞘入
参考文献・資料:
『尾張刀工譜』 名古屋市教育委員会、昭和59年3月31日