S64740(S5894) 刀 無銘 吉岡一文字 附)茶潤紐巻文鞘馬具図打刀拵 |
特別保存刀剣 |
古刀 鎌倉時代中期(嘉元頃/1303~05) 備前 刃長67.2cm 反り2.2cm 元幅26.7mm 元重6.0mm 先幅18.7mm |
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鎌倉時代の備前物の潮流は一文字と長船の両派である。一文字とは古備前鍛冶に続いて現れた一門で御番鍛冶の『則宗』を始祖とし、後鳥羽上皇より『天下一』の名匠であるという栄誉から賜ったもので、その伝統と名誉を讃えて代々『一』の字を個人銘の代わりに切り付けたものと伝えられている。銘は『一』の字のみのものと、他に『一』の字の下にさらに個銘を加えるものや、個銘だけのものもある。鎌倉初期から中期にかけての期間に長船の南隣、福岡の地で鍛刀した一門を『福岡一文字』と呼称し、次いで鎌倉中期から吉井川の左岸、赤磐郡吉岡庄(現在の瀬戸町)に住した一門で、福岡一文字助宗の孫である『助吉』を開祖とする『吉岡一文字』がある。吉岡一文字の代表工には助吉・助光・助茂・助次・助義などがいて『助』を通字としており、作風は福岡一文字の名残がある大模様の乱れのものも見られるが、一般には丁子乱れの中に互の目が目立ち、総体にやや小出来となることが見所である。 この刀は庵棟が低く、磨上げながらも腰反りが付き、茎にも反りが有り、物打ちより上部は伏さりごころとなり中切先に結ぶ。表裏には茎で角留めの棒樋の彫り物がある。樋の角留めの位置より、元姿は刃長二尺六寸五分(約80.5cm)であったことが判る。鍛肌はよく詰んだ小杢目肌を主調に板目肌を交えて処々流れ、平地には地沸がつき、乱れ丁子映りがたつ。刃文は、華やかな丁子に互の目や尖りごころの刃が交じり、焼刃に広狭があり、部分に大房丁子を交える。刃中は匂い充満し、丁子足・葉が入り、匂勝ちで、金筋・砂流しが細かにかかるなどの出来口を示している。帽子は焼きが深く、乱れ込んでやや浅く返る所詮、一文字鋩子を形成しているなど一文字派の特徴を表出している。やや細身の体配と、小模様の丁子や互の目を主調としてながらも焼刃には高低があり大房丁子を交える刃文や見事な丁子乱れ映りを顕すなどの卓越した手腕を示すことから、やや時代を上げた鎌倉時代中期の吉岡一文字の作と鑑することができる一口で、同派の見所をよく示している。(刀身拡大写真) 付帯の茶潤紐巻文鞘馬具図打刀拵(拵全体写真・刀装具拡大写真)
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