T251915(S8877) 刀 銘 加賀守貞則 附)朱溜塗鞘野猪図打刀拵 特別保存刀剣
新刀 江戸時代前期(延宝頃・約330年前) 摂津
刃長72.6cm 反り1.0cm 元幅32.1mm 先幅21.7mm 元厚7.7mm
貞則は俗名を鈴木佐右衛門。本国は肥後国菊池と伝えられ、摂津にて井上真改の門に学ぶ。後に内藤家の抱工となり、延宝2年(1674)に7人扶持米20俵で、磐城平藩主・内藤義概の御抱え鍛冶となり、平城下久保町に屋敷を賜わり鍛刀に従事していた。内藤家が磐城に封ぜられるに従い山城から磐城へ移ったといわれる。
いわき市の指定文化財(重要刀剣)に
銘 表 八幡大菩薩鈴木加賀守貞則
     裏 洛陽堀川之住人奥州磐城於好間作之
       延宝三年八月日
があり、延宝3年(1675)8月に飯野八幡宮へ奉納したもので、資料的価値が高い。
三神号を茎に切り付けをしたり、また本刀のごとく、武士の守り神である摩利支尊天(護身や勝利、開運などをつかさどる仏教の護法神として信仰を集め、猪に乗っている)の神号や素剣を刀身に彫ったものがある。(刀身拡大写真)。「刀工辞典(新刀編)」では加賀守貞則を上作に列し、「懐宝剣尺」では業物に位付けされている。
雑学ではあるが加賀守貞則の弐尺五寸壱分の刀は鬼平犯科帳の長谷川平蔵の差料でもあり、長すぎるとの事由から、子の長谷川辰蔵に譲られた伝えられる。
この刀は鎬造り、庵棟、身巾ひろく、重ね厚く、寸延びて、中鋒が延び心となる。鍛は小板目良く詰んだ精緻な鍛えで地沸が厚くつく、刃は匂口の柔らかな作風を遺憾なく発揮しており、大阪焼だしにはじまり、総体に焼幅が広くかつ広狭のある互の目を主調として、処々箱がかり、複式の互の目に小丁字をまじえ、匂い深く小沸出来で地刃ともに頗る明るく冴える。帽子は直に小丸となるなど師伝を忠実に踏襲した優品でありかつ健全な躯体が頗る印象的。
附帯の朱溜塗鞘打刀拵は白鮫着納戸燻革菱巻柄、四分一地縁頭、赤銅容彫目貫、瑞雲図鯉口・栗形・鐺は赤銅片切彫金玉象嵌、赤銅磨地撫角鍔(両櫃孔金埋、金螺旋覆輪)など処々に魔利支尊天のお伴をしたと伝えられる猪を配しており、内外ともに完存の上級武士の指料に相応しい希有な優品である。
金着せ二重はばき、白鞘附帯。