Tuba2778a

州濱紋二双透鐔

銘  戸田彦左衛門

丸碁石形、鉄磨地、阿弥陀鑢、小透、丸耳、両櫃孔

縦 81.8mm 横 81.5mm 4.8mm(切羽台)

特別保存刀装具鑑定書

江戸時代中期を代表する尾張鐔として『戸田彦左衛門』を挙げることが出来る。同工は尾張国海東郡戸田村(現在の名古屋市中川区戸田)に住した。

この鐔は刀匠鐔に範を採ったものであろう。丸形の磨地を碁石形に造り込み、細やかな阿弥陀鑢を施して小透かしを配する。紫錆の清涼な地鉄は強く冴えて鉄味よろしく美しい。簡素ながらも入念に施された二双の小透かしは調和がとれ、戸田の豊かな感性を感じ取ることが出来る。銘は切羽台の左側に一行細鏨、草の運びで『戸田彦左エ門』とくずしており、『左』は『右』と見誤り易いような鏨運びは同工の特徴である。武芸どころの質実な尾張気質のなかにも、元禄頃の洗練された作風が感じ取れる。