G80285(T3189)

短刀 銘 美濃國兼國作 平成二十三年二月吉日 附)琥珀変塗鞘合口短刀拵

現代刀 (平成二十三年/2011) 岐阜県
刃長 24.1cm 無反り 元幅 24.1mm 重ね 5.1mm

無鑑査刀工


10回まで無金利分割払い(60回まで)



剣形:平造り、庵棟。尋常な身幅で重ねはやや薄めにやや内反りごころ。(刀身拡大写真
鍛肌:板目肌錬れてやや肌立ち板目に沿って地沸つき地景となる。
刃紋:腰に互の目を焼いて沸出来の湾れ乱れに小乱れを焼き、上部にいくにしたがい焼幅広く、大模様となる。フクラで大きく互の目を焼いて鋩子は地蔵風に突き上げて沸で尖り返り深く棟に留まる。刃縁にはやや粗めの沸が厚く積もり砂流しかかり、金筋入り、匂口冴える。
帽子:乱れ込んで突き上げて強く掃きかけて深く焼き下げる。
中心:生ぶ茎。鑢目は大筋違に化粧、棟小肉つきここに大筋違の鑢目がある。先栗尻。目くぎ穴一個。指表中央目釘孔下にに長銘『美濃國兼國作』、裏には『平成二十三年二月吉日』の年紀がある。
 刀匠、尾川兼國は本名を尾川光敏。父である故、尾川邦彦・刀工銘『兼圀』無鑑査作家、岐阜県重要無形文化財保持者の次男として昭和二十八年(1953)に生まれた。神奈川県のガラス施工一級技能士としての職歴を経て、意を決して三十三歳の時に父のもとに入門、『尾川兼國』と名乗る。
父の『兼圀』とともに武芸八幡町にて鞴を構えて槌音を響かせた現代を代表する名匠である。父の『圀』と子の『國』の異なる字を充ててともに『かねくに』と読む。
 尾川兼國刀匠は文化庁長官賞、日本美術刀剣保存会会長賞、薫山賞の数々の賞を連続受賞し、平成九年(1997)の新作名刀展では特賞の一・二席にあたる賞を尾川兼圀・兼國の親子が独占している。父の『兼圀』は平成十八年(2006)、人間国宝に次ぐ名誉とされる無鑑査作家認定、同二十年(2008)には岐阜県重要無形文化財認定保持者の栄誉に輝いたのに続き、子の『兼國』は平成二十一年(2009)には『無鑑査』認定をうけている。尾川親子は刀匠界の親子鷹として名を馳せて刀匠の血筋・巧の技、手際の良さと情熱を今に受け継いでいる。寄せては返す大きな波濤を想わせる『濤瀾刃』と呼ばれる刃文は父から子へと受け継がれ、兼國刀工はさらに美的に昇華させていくであろう。
 表題の短刀は鎌倉時代後期の古雅な姿恰好に相州伝を顕著に示している。清涼な地鐵を用いて正確な鍛錬がなされた板目鍛えの地鉄は、板目の鍛接部に地沸が微塵について地景が表出して古風に肌立つ。刃縁は沸が新雪のごとく厚く積もり明るく冴え、刃中は板目肌に呼応する砂流し、金線の沸筋が表出している。帽子の焼刃は鋭く突き上げて沸で尖るなど所謂、『左文字』の作域を積極的に採り入れた優作である。無鑑査刀匠『兼國』は父の作域を超越、新たな分野を創造して多くの人々を魅了する。

附)琥珀変塗鞘合口短刀拵表全体写真裏全体写真/柄拡大写真/拵各部拡大写真

  • 目貫:獅子図、赤銅容彫、色絵
  • 柄:白鮫着、水牛飾目釘
  • 下緒:茶燻革

光沢ある親粒の白鮫着柄には獅子の出目貫を充て、透明感溢れる艶やかな琥珀変塗鞘の合口拵が附されている
金着せ二重はばき、白鞘付属