K13713(T3720)

短刀 銘 友重 附)腰潤黒石目地青貝散塗笛巻鞘短刀拵

古刀 室町時代後期(明応頃/1492~)加賀
刃長27.5cm 無反り 元幅22.0mm 元重ね4.7mm

保存刀剣鑑定書

附)腰潤黒石目地青貝散塗笛巻鞘短刀拵

 

剣形:平造り、庵棟。先僅かに筍内反り。尋常な身幅に寸が延びやや薄めの重ね。刃長に比して茎が長い(107.3cm)造り込みは刺突に好適な造り込みをしている。(刀身拡大写真)
彫物:表の腰元には護摩箸、裏には腰樋の彫物、双方ともに区下まで掻き流す。
鍛肌:板目に杢目、流れる肌合交え刃・棟寄り柾目肌顕著に肌立つ。
刃紋:刃縁は小沸厚くついて、湾れに箱刃、小互の目、ほつれる刃交えて互の目足頻りとよく入り金線かかる。刃中は匂深く充満して葉浮かび、地刃ともに沸・匂の豊かな働きがある。
帽子:刃沸豊かに絡んで表は乱れ込んで先尖りやや深く返る。裏は同じく強く乱れ込んで沸づいて焼崩れ返り短く硬く留まる。
茎:生ぶ。茎長107.3cmと常より長め。大きく穿かれた目釘孔壱個。鑢目は切、棟小肉つく。茎尻は特徴ある刃上片削茎。目釘孔下方に古雅な二字銘『友重』がある。

 初代『友重』は『来国俊』の子または門人。越前の藤嶋に移り藤島派の祖となったという。越中国則重の高弟『真景』とともに隣国の加賀に移住して室町時代には藤嶋系や橋爪系陀羅尼系などの各派が隆盛した。古刀期の『友重』は貞治頃の二代、応永三代、文安・康正頃の四代、明応頃の五代とつづき、新刀期の江戸時代まで継承された名流。
 この短刀は明応頃(1492~)の五代あたりの作刀。古刀期の藤島友重の茎仕立ては異風の入山形の派生形で『刃上片削茎』または『加州茎』と呼ばれている。

附)腰潤黒石目地青貝散塗笛巻鞘短刀拵(拵全体写真  刀装具各部写真
  • 縁頭:貝殻図、赤銅石目地、高彫、金色絵 銘 於藝陽萬舎 正阿弥盛富制(花押)
  • 目貫:戌図、容彫、金色絵
  • 鐔:波千鳥図、山銅地、鋤下彫、毛彫、赤銅色絵、金玉象嵌、無銘
  • 小柄:貝散図、赤銅魚子地、高彫、金銀色絵、裏哺金、無銘
  • 柄:白鮫着、黒色常組糸諸撮菱巻
銀着石垣はばき、白鞘付属
(注)正阿弥派『盛富』は伊予松山住。文化二年、文政二年の年紀を添えた作がある良工
参考資料:
本間薫山・石井昌國 『日本刀銘鑑』 雄山閣 1975

若山 猛 『刀装金工辞典』 雄山閣 1996