H63012(W5013) 脇指 銘 兼信 附)茶皺革包変塗鞘小さ刀拵 |
保存刀剣 |
古刀 室町時代後期 (永禄頃/1558〜) 美濃 刃長31.8cm 反り0.3cm 元幅26.7mm 元重6.0mm |
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剣形:平造り、庵棟。元重ね厚く寸延びて僅かに反りがつく。元先の幅差さまで付かずフクラ張る。(刀身全体写真) 彫物:表裏に茎に掻流し棒樋の彫物がある。 鍛肌:板目に杢目肌交えて肌目立ち、穏やかに霞んで白けごころの映りがたち、鍛肌目に沿って地景がはいる。 刃紋:ごく短く焼きだして逆がかった互の目は純白の小沸で匂口明るく締まり、刃中は清涼な匂いで霞立ち、刃寄りの肌目に呼応して幾重の砂流し・金筋交じえる。 中心:茎生ぶ。目釘孔弐個。鑢目は檜垣。茎尻は栗尻張る。掃表の平地中央には大振りの二字銘「兼信」がある。 帽子:表は乱れ込んで火炎となり激しく突き上げて先尖り、深く焼き下げる。裏は大互の目を焼いて『地蔵風』に中丸となり返り深く留まる。 南北朝時代中期から応永にかけての三十数年の短い期間で栄えた直江の刀工達は室町時代にはいると赤坂や関に移住して繁昌した。兼信は初代を応安頃、兼氏の子もしくは門人と伝え、後代は関に移り同銘が数代続いている。 この脇指は濃州関、室町時代後期の、太刀の添指として具えられた寸延短刀(注)。青黒く冴えた地鉄鍛えの板目肌は大杢を交えておおらかな地景が湧いて、刃寄りの流れ肌は刃中の幾重もの砂流しとなる。三河・尾張武士の需であろう、焼刃は常より高く、よく沸えて帽子は烈しく乱れ込んで自由闊達な作風は婆娑羅の機運が高揚した戦国時代の典型。茎の漆黒の錆味深く落ち着いて、鑢目明瞭に力強く刻された二字銘の鏨枕は鮮明に温存されている。 附)茶皺革包変塗鞘小さ刀拵(拵表全体写真・拵裏全体写真・刀装具各部写真)
参考文献:鈴木卓夫・杉浦良幸『室町期美濃刀工の研究』里文出版、平成十八年 注)登録証・保存刀剣鑑定書にはわきざし(脇指)と記されている |
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