K64198(W5014) 小脇指 銘 備州長船康光 應永廿三年十月日 附)黒塗腰小刻金梨子地笛巻鞘小さ刀拵 |
特別保存刀剣 | |
古刀 室町時代初期(応永廿三年/1416) 備前 刃長 32.2cm 無反り 元幅 25.5mm 元重 5.5mm |
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剣形:平造り、庵棟、ほぼ無反りの小脇指。尋常な身幅に比して刃長延びた平造添指の姿は、室町時代初期に流布した体躯である。(刀身拡大写真)。 彫物:表裏には、はばき上で丸留の棒樋の彫物がある。 鍛肌:板目に杢目交えて肌立ちごころに淡く地斑調の棒映りがたつ。 刃紋:小沸出来の小湾れに丁子刃・小互の目交えて複式となり、逆がかった丁子を交える。刃中匂い深く、足・葉盛んに砂流しを交えて匂口が清涼に明るく冴える。 帽子:先僅かに尖りごころとなり浅く返る。 中心:生ぶ茎。刃長に比してやや短めの造り込みで先栗尻。目くぎ穴一個。鑢目は勝手下がり、棟肉は平となり同じく勝手下がりの鑢目がある。指表の中程には長銘『備州長船康光』が刻され、裏には『應永廿三年十月日』の年紀がある。 室町時代、応永年間になると長船の地には格調高い作風を示す刀工達があらわれた。この期の備前刀が応永年紀を切ることから『応永備前』と呼称される。『応永備前』の諸工は鎌倉時代のものに近い丁子乱れに互の目を主調とした復古的な作風を示すようになる。『康光』は『倫光』の子で『兼光』の曾孫にあたる。長兄には『師光』、次兄には『盛光』がいる。応永年間に『右衛門尉』を冠する初代の『康光』は『盛光』、『師光』とならび当代随一の名匠として賞揚されて『上々作』に列し、初代『康光』には次兄『盛光』との合作がある。 康光には初・二代あったとおもわれ、応永(1394~1427)頃の『右衛門尉』を初代とし、正長・永享・嘉吉・文安(1428~48)年紀の『左京亮』を二代とされている。重要文化財の指定品には太刀 銘『備州長船康光 応永廿二二年二月日』がある。 同工の平造りは寸延びてほぼ無反りの凛とした体躯が多い。刃文は小湾れに互の目乱れ・丁子を交えて複式となり、足・葉などよく入る一文字の作域に倣った賑やかな作があり、他方では青江に念頭をおいた直刃の穏健な出来口がある。地鉄鍛は『応永杢』と呼ばれる杢目に板目を交えて肌立ち、地沸ついて地景入り、刃縁より暗帯部を伴った地斑調の棒映りがある。 この脇指は初代右衛門尉康光の吉岡一文字写しを明示する優品で、600有余年前の元姿をとどめて貴重である。 附)黒塗腰小刻金梨子地笛巻鞘小さ刀拵(拵全体写真・刀装具拡大写真)
参考資料:長船町『長船町史』大塚工藝社、平成十年 |
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