O102148(S827) 刀 無銘 大和志津
附)黒蝋色塗鞘天正拵
第四十六回重要刀剣
古刀 南北朝時代 (貞和頃/1345〜) 大和
刃長 71.2cm 反り 1.7cm 元幅 30.0mm 先幅 22.0mm 元厚 6.0mm
剣形:鎬造、三ツ棟。身幅く、鎬幅広く、鎬筋幾分高く、重ね薄め、反りやや深くつき大峰に結ぶ。(刀身拡大写真
彫物:表裏の幅広鎬地には樋先の下がった片チリ棒樋を茎に掻き流す。
鍛肌:板目処々流れ柾がかる肌合い交じえ、地沸よくつき、地景入る。
刃文:大小の互の目乱れに尖り刃交じり、匂い深く、沸厚くつき、頻りに砂流し・金筋長くかかり湯走りかかる。
帽子:延びごころ大鋒の焼刃は乱れ込み、火炎風に掃きかけて焼詰める。
茎:大磨上、茎尻先切り、鑢目切、目釘孔四、内二銅埋。
 大和志津とは狭義の呼称として、鎌倉末期頃に兼氏(和州包氏)が美濃国多芸郡志津村に移住する以前の大和国在住時代の手掻、初銘『包氏』と銘を刻していた頃の作を指すものである。『包氏』は相州正宗に師事して大成し、正宗十哲の一人に挙げられ、『兼氏』と改め、志津三郎と号した。大和伝に相州伝を加味した名匠とし名高い。
 同工が美濃国志津に移住後も南北朝時代の大和国には『包氏』の名跡は受け継がれ、従来の大和五派とは伝法を異とした相州伝系の一門として活躍している。広義にはこれらの刀工一門も『大和志津』と呼称している。同派の作刀は大和伝の特質がよく現れた柾目交りの板目肌に、穏やかな湾れ調の沸本位の焼刃を呈した相州伝を特徴としている。
 本作は擦り上げながらも尚南北朝期の豪壮な体躯を明示している。直江志津の刃取りを彷彿させる互の目・尖り刃を主調とする華美な刃文を魅せながらも、入念に精査すると同直江派の作風よりもさらに目立って金筋・砂流が長くかかり、帽子を強く掃きかけて火焔風に焼詰めることから相州伝に大和気質が混在する作風を明示しており大和志津の極めは首肯されよう。同派大和志津中の優品であり、第四十六回重要刀剣に指定されている。
附)黒蝋色塗鞘天正拵拵全体写真各部拡大写真
  • 縁頭:雨龍図、赤銅石目地、高彫、銘 田中氏盛征彫(薩摩金工)
  • 目貫:龍図、金地、容彫
  • 鐔:雲龍図、赤銅魚子地、高彫、色絵、無銘
  • 柄:白鮫着、古代紫色細糸組上蛇腹菱巻
金着二重はばき。白鞘付属
参考資料:重要刀剣図録
 
刀 無銘 大和志津
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